3.相続事件

1.人の死亡により相続が開始した場合、配偶者は常に相続人になり(民法890条)、その他の親族は、子、直系尊属、兄弟姉妹の順で相続人となります(但し、欠格事由がある場合を除きます)。例えば、配偶者と子供一名と両親が生存しているような場合には、配偶者と子供だけが相続人となります。法定相続分は、配偶者と子との間では2分の1づつ、配偶者と直系尊属間は配偶者が3分の2直系尊属が3分の1、配偶者と兄弟姉妹間では配偶者が4分の3兄弟姉妹が4分の1で複数の子、直系尊属、兄弟姉妹間は、原則として平等に按分されます(なお、夫婦間に生まれた子ではない、いわゆる非嫡出子については、嫡出子の2分の1の割合となります。)(民法900条)。

2.相続財産については、遺産分割で、法定相続分と異なる相続分を決めることができます。遺産分割は、全相続人が任意に協議・合意のうえで決定する「遺産分割協議」の方法と、家庭裁判所の調停によって決定する「遺産分割調停」の方法とがありますが、いずれも相続人が合意する必要があります。合意できない場合には、家庭裁判所に「遺産分割審判」を申立、審判によって遺産分割の内容を決定する手続があります。

3.なお、共同相続人の中に被相続人から生前贈与や遺贈などの特別受益を受けた者がいる場合には、遺産分割に際し、相続財産に特別受益である生前贈与を加えたものを相続財産とみなして、これを基礎として各相続人の相続分を算定し、特別受益者については、この一応の相続分から特別受益分(生前贈与や遺贈の分)を控除した残額をもって特別受益者の具体的相続分とすることになっています(民法903条)。
 また、遺産分割に当たり、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護、その他の方法によって、被相続人の財産の維持・増加に特別に寄与した相続人は、寄与分に応じて法定相続分を超える相続財産の取得が認められることになっています(民法904条の2)。

4.
相続が開始すると、相続人は、原則として、相続開始のときから、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継することになります(民法896条)。相続する財産は、財物などの積極財産はもちろん、債務も消極財産として承継します。ただし、相続が開始しても、被相続人の債務が多く、財産が少ない場合には、相続人は、相続放棄、限定承認をして、債務の継承を免れることができます(民法915条)。また、相続によって得た財産の限度においてのみ債務、遺贈を弁済すべきことを留保して承認すること(限定承認)もできますが、財産目録を調整して家庭裁判所に提出し、限定承認の申述をする必要があります(民法924条)。  相続放棄については、家庭裁判所に対する申述の手続を行わなければ無効であります(民法938条)。

5.
問題は、被相続人が死亡したことを知っても、その被相続人に多額の借金などがあることを知らない場合に、相続放棄の手続をしなかったという場合に、債務を承継しなければならないのかという点です。民法は、第915条第1項本文で「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」と規定し、被相続人が死亡したことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述を行わなければ、相続放棄ができないかのように規定しています。これでは、多額の借金の存在を知らなかったがために相続開始から3ヶ月以内に相続放棄をしなかったというケースで、相続人は多大な不利益を被る危険があるのです。
 しかし、判例上、この民法915条1項の3箇月の熟慮期間については、相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識し得べき時から起算すべきであるとされ、相続開始後3ヶ月を経過していても、相続放棄が認められる場合があります。実際に、多額の負債がないと信じていた場合に、死亡後3箇月を過ぎていても、相続放棄が認められたケースは数多く存在しています。

 

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