4.遺言

1.被相続人が自己の財産等の処分やその他の意思表示を行う遺言には、いくつかの方式があります。普通方式のものとして、
  @自筆証書遺言(民第968条
  A公正証書遺言(民第969条
  B秘密証書遺言(民第970条
が、特別方式のものとして、
  @一般危急時遺言(一般臨終遺言、民第976条
  A難船危急時遺言(難船臨終遺言、民第979条
等があります。通常の場合、普通方式が行われることが多いので、以下、自筆証書遺言と公正証書遺言について説明します。

2.自筆証書遺言は、遺言者が一人でいつでもどこでも作成できますし、内容を秘密にしておけますので、便利です。しかし、要件が厳格に決められており、遺言者がその全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければなりません。そのため、これらの要件を一つでも欠いた遺言は無効となります。また、字句の訂正にも要件があり、加除その他の変更する場所を指示し、加除訂正削除など変更した旨を書き、特にその付記したところに署名し、変更したところに印を押すことが必要とされています(民第968条2項)。その他、自筆証書遺言ではその記載内容によっては解釈が多義的となったり、本当に被相続人が作成したか、被相続人の意思で作成したか、当時行為能力に問題はなかったか等が、後に相続人間で紛争を招く場合もあり得ます。自筆証書遺言は複数部作成(自署のためカーボン複写など)し、親族のほか、弁護士などに預けておくのが良いでしょう。相続が開始した後は、相続人らは、右自筆証書遺言を遅滞なく家庭裁判所に提出して検認(封印のある遺言書を開封する)手続を得なければなりません(民1004条)。これに反して遺言を執行し、または家庭裁判所以外においてその開封をした者は5万円以下の過料に処せられます(民1005条)。

3.他方、公正証書遺言民969条)は、公証役場で公証人によって作成してもらうものですから、上記のような要件を欠く心配は皆無ですし、記載内容も一義的であるので、問題が生じる可能性は少なくなります。とはいえ、被相続人の意思や行為能力については、後日争いになる余地はあります。公正証書遺言を作成するには、公証人が遺言者が述べた事柄を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせまたは閲覧させることが必要ですが(民969条3号)、判例上(最判昭和43年12月20日)、公証人が予め他人から聴取した遺言の内容を筆記し、公正証書に清書したうえ、その内容を遺言者に読み聞かせたところ、遺言者が右遺言の内容と同趣旨を口授し、これを承認して右書面に自ら署名押印したときも有効な方式とされています。 もっとも、最近の判例で、予め用意された書面を公証人が読み上げ、図面を示されたことに関して、遺言者が「それでよい」と言っただけの事案について、「遺言者が右書面や図面の作成に自ら関与するなどして本件遺言の内容について予め十分承知していたと認められる特段の事情がない限り、遺言者の右発言だけでは右要件にいう『口授』があったものと言うことはできない」(大阪高判平成9年3月28日)として、遺言を無効にした事例もありますので、口授は単なる肯定の一言では足りず、法律に沿って適正な遺言手続が行われる必要があります。

4.
遺言書は何度でも書き直すことができます。その場合には紛らわしさを避けるため、被相続人自身が従前の遺言書を破棄処分することが普通です。しかし、遺言書が複数存在した場合には、日付の後のものが優先します。

.夫婦間に子供がおらず、例えば夫が死亡して不動産を残した場合には、残された妻と夫の親ないしは兄弟姉妹等が相続人となることから、紛争が生じる場合が多いと言えます。したがって、被相続人の死後、相続人間に紛争を生じさせないためにも、多くの場合遺言をしておいた方が良いでしょう。

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