8.建築紛争事件  

建築紛争にかかわる問題は、いわゆる欠陥住宅に起因する住宅建設業者・住宅販売業者と、マンションや一戸建住宅等の住宅を購入した者との間のトラブルがあります。  住宅購入については、建築業者と請負契約を締結して購入する場合と、建売住宅や分譲物件を売買によって購入する場合とがありますが、購入した物件に瑕疵("カシ"と読み、通常の用途もしくは契約上特定された用途に適しないキズ、不具合などのことであります。)がある場合、各契約の態様によって、法的な効果が異なっています。  まず、建物の瑕疵とは、完成された建物が契約で定められた内容通りでなく、使用価値あるいは交換価値を減少させるような不完全な点を有することであり、
@地盤・土台等の基礎工事の瑕疵
A屋根・外壁・柱等の躯体工事の瑕疵
B電気・ガス・給排水、備付器具等の設備工事の瑕疵
C内壁・畳・床・天井・建具、左官等の内装工事の瑕疵
などがあり、また、建物の瑕疵ではありませんが、門壁・庭園等外構工事の瑕疵などもあります。
1.建物建築請負契約の瑕疵とその判定基準
 建物建築請負工事契約書には、一般に設計図、仕様書、請負代金内訳書、工程表などが添付・提出されますので、これらの資料が瑕疵の有無を判断する重要な資料となります。
 設計図に記載された通りの施工がなされなかった場合には容易に瑕疵が認められますが、設計図だけで工事内容が判然としないような場合には、工事代金が瑕疵の有無についての重要な判断基準となります。例えば、「工事代金を坪単価8万円と定めた趣旨は、単に請負代金総額を算出するための基準単価を定めたというにとどまらず、坪単価8万円以上で売却できるような建物を完成する趣旨、換言すれば、目的物件を坪単価8万円の客観的価値を有するものとして仕上げる趣旨の約定を含むものと解するのが相当である」と判示した裁判例(東京高判昭和48.9.21、判時724―35)などがあります。もっとも、代金額が低額であっても、本来建物として最低限期待される性能の具備は保証されなければならないと解されますので、雨漏り、壁のひび割れ、排水の不備などは、工事代金額にかかわらず建物の瑕疵と解されます。
 このような建物の瑕疵については、注文者の側で、その損傷部分だけでなく発生原因までを具体的に主張・立証すべきとされますので(東京地判平成2.2.9、判時1365―71)、事案によっては、建築士などの専門家に、調査、鑑定をしてもらう必要があります。

2.
請負人の瑕疵担保責任
 まず、注文住宅を購入した注文者は、民法上、建築を請負った建設業者に対して、建築された建物の瑕疵について、相当の期間を定めて補修工事を請求できます(瑕疵が重要でなく、もしくは過分の費用を要するときを除きます)。注文者は、この瑕疵修補請求に代えて、又は瑕疵修補請求とともに損害賠償請求をすることもできます(民法634条)。但し、建物の場合には、建物が完成した場合には、社会経済的見地から、民法上、瑕疵があるからといって契約解除はできないとされております(民法635条)。
 また、この瑕疵修補請求権もしくは損害賠償請求権は、建物の引渡し後5年又は10年(石造、土造、煉瓦造又は金属造の工作物については10年、それ以外のものについては5年)で消滅します(民法637条)。
 なお、平成11年6月25日に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(いわゆる「品確法」)が制定され、平成12年4月1日に施行され、瑕疵担保責任について、特則が規定されました。これにより、新築住宅の請負人に、住宅の構造耐力上主要な部分または雨水の侵入を防止する政令で定める部分の瑕疵について、引渡時から10年間の瑕疵担保責任が強制的に認められ、住宅購入者の権利が強化されています。但し、新築住宅の場合に限定されること、住宅の構造耐力上主要な部分または雨水の侵入を防止する政令で定める部分の瑕疵に限定されることから、住宅購入者を全面的に保護する制度とはなっておりません。

3.
売買の場合
 建売住宅やマンションを購入した買主は、当該物件の内容が契約書に定められたものと異なるなど、売主に契約上の義務違反がある場合には、売主に対し、債務不履行に基づく契約解除ならびに損害賠償請求をなしうるほか、通常の注意を払っても気付かないような、隠れた瑕疵がある場合にも、契約解除(契約の目的を達しない場合)、ならびに損害賠償請求が可能であります(民法570条)。ただ、売買の場合は、請負の場合と異なり、民法上、一般に瑕疵修補請求はできないものとされていますが、瑕疵修補請求を認めるべきとする学説もあります。いずれにしても、売買契約書中に瑕疵修補請求権を特約条項に入れれば問題ありません。もっとも、品確法が平成12年4月1日に施行されておりますので、以降の契約については、新築住宅の売主に、住宅の構造耐力上主要な部分または雨水の侵入を防止する政令で定める部分の瑕疵について、引渡時から10年間の瑕疵担保責任が強制的に認められております。これによれば、従来売主に対して認められなかった瑕疵修補請求が肯定され、住宅購入者の権利が強化されています。但し、やはりこの場合も、新築住宅の場合に限定されること、住宅の構造耐力上主要な部分または雨水の侵入を防止する政令で定める部分の瑕疵に限定されることから、住宅購入者を全面的に保護する制度とはなっておりません。
 また、建売住宅や、マンションの販売については、売主だけでなく、仲介業者ににも、契約上の責任が生じます。宅地建物取引業法は、宅建業者に対し、宅地建物の売買、仲介に際し、重要事項の説明を書面によって為すべき義務を課し(宅建業法35条)、重要事項を故意に告げなかったり、虚偽の説明を為す行為を禁止し(宅建業法47条)、違反者に対して1年以下の懲役ならびに50万円以下の罰金刑を科しています(宅建業法79条)。このような、重要事項の説明義務を怠った宅建業者に対しては、契約上の債務不履行責任(契約解除・損害賠償請求)を追求することができます。
 また、宅建業法は、宅建業者が自ら売主となる宅地建物の売買契約において、瑕疵担保責任を物件引渡しの日から2年以上とすることを特約した場合を除いて、買主が瑕疵の存在を知った時から1年未満に制限する内容の特約の締結を禁止しております(宅建業法4条)。

4.
実際の契約には、建物の建築請負か、売買か判然とせず、複合的な契約である場合が存在します。建売住宅の売買の形式を取りつつも、実際には、部分的に買主のオーダーメイド的な変更工事や追加工事を認める契約もあります。これらについては、契約の趣旨や当事者の合理的意思を判断して、法を適用することになります。

 

 

 

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