10.マンション区分所有建物に関する事件

 建物の区分所有権とは、一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所、倉庫など、建物としての用途に供することができるものについて、「建物の区分所有等に関する法律」(いわゆる「建物区分所有法」)の規定で、所有権の目的とすることができるとされた権利であり(区分所有法1条)、区分所有権を有する者を区分所有者といいます(区分所有法2条)。
1 区分所有者の権利義務  区分所有者は、区分所有権の対象となる専有部分を所有しますが、専有部分以外の部分は、共用部分とされ、原則として区分所有者全員の共有関係になります(区分所有法2条、11条)。玄関、廊下、階段室、ロビー、エレベーター、屋上など、構造上共用に供される部分は、規約によらなければ区分所有権の目的にできません(区分所有法4条)。また、各共有者は、規約に別段の定めをしない場合には、持分に応じて共用部分の負担を負い、共用部分から生ずる利益を収得します(区分所有法19条)。したがって、共用部分の維持管理に必要な費用(共用部分の電気料、共用水道の料金、共用設備の保守保全費、共用部分の公租公課分担金、町会費、修繕・建て替えのための積立金など)は、管理費として、区分所有者が専有部分の床面積(区分所有法14条)に応じて負担義務を負います。反対に、共用部分を利用した賃貸駐車場の収益などについては、区分所有者が専有部分の床面積に応じて取得することになります。  共用部分は、区分所有者各人が、その用法にしたがって使用することができ、保存行為を行うこともできます(区分所有法13条、18条1項但書)。従って、用法を超えて使用する者に対しては、妨害排除請求ができますので、例えば、廊下に物を置いて独占している区分所有者に対しては、物の撤去を請求することができます。なお、共用部分の大規模な修繕をしたり共用部分を改造する行為は、共用部分の変更になり、改良を目的とし、かつ、著しく多額の費用を要しない場合を除いて、区分所有者及び議決権(区分所有者の専有面積割合となります。区分所有法38条、14条)の各4分の3以上の多数の集会の決議がなければ行うことができません(区分所有法17条)。  区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない義務を負います(区分所有法6条)。具体的には、
@共用部分の不当毀損、不当使用行為
A建物の基本構造を弱めるような専有部分の不当毀損、不当使用行為
B他の区分所有者の人格権を侵害するような不当な生活態度をとること(騒音、振動、悪臭、プライバシー侵害等)
C管理費等の不払い
などが、義務違反となります。  区分所有建物が所在する土地及び規約で敷地と定められた土地は、区分所有法上の建物の敷地とされ、区分所有者が専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利を敷地利用権といいます(区分所有法2条)。そして、敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利(地上権、賃借権など)である場合には、区分所有者は区分所有権と敷地利用権とを分離して処分することが原則として禁止されます(区分所有法22条)。
2 管理組合と規約について  区分所有法は、法律上当然に区分所有者全員で団体(管理組合)を構成する旨定め(区分所有法3条)、区分所有者数30人以上の管理組合については、法人化の道が開かれております(区分所有法47条)。そして、区分所有法は、管理組合(または管理組合法人)が、集会を開き、規約を定め、管理者をおくことができる旨定め、区分所有者が管理組合を通じて建物を共同管理し、区分所有者間の利害を調整するための仕組みを定めております(区分所有法3条以下)。  規約とは、管理組合における自治規範であり、区分所有者を拘束します。区分所有法は、建物等の管理、使用に関する区分所有者相互間の事項を規約で定めることができるとしています。規約の設定、変更、廃止については、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議が必要であります。  管理組合では、共用部分の変更に当たらない共用部分の管理については、規約で別段の定めがある場合を除いて、通常の集会決議(区分所有者及び総専有面積の過半数による決議)をもって行うこととされており(区分所有法18条)、また、管理組合では、集会の決議によって管理者を選任・解任することができ(区分所有法25条)、管理者は、共用部分の保存や集会決議の実行その他規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負担し、区分所有者を代理しますので(区分所有法26条)、管理組合では、規約がない場合でも、共用部分に関する管理について、集会決議をして、管理者に実行させることができます。
3 義務違反者に対する措置  上記のとおり、区分所有者は、区分所有法6条により、建物の管理・使用に関して区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない義務を負いますが、この義務に違反する者に対しては、法律の規定にしたがって、行為の停止、建物の使用禁止、競売申立などの措置をとることができるとされております。  たとえば建物の基本構造を弱めるおそれのある専有部分の増改築や、カラオケの騒音が大きい場合には、他の区分所有者の全員または管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置をとることを請求することができます(区分所有法57条)。行為の停止は、建物を占有しているものに対しても請求することができます。  また、このような場合、区分所有者の共同生活上の障害が著しく、上記のような請求をしただけではその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員または管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもって、相当期間当該区分所有者の専用部分の使用の禁止を請求することができますし(区分所有法58条)、また、他に方法がないような場合には、当該区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することもできます(区分所有法59条)。占有者に対しては、占有のもとになっている契約の解除や引渡請求ができます(区分所有法60条)。  したがって、例えば、暴力団関係者が、入居して、地上げのための嫌がらせを繰り返すような場合や、暴力団組事務所をマンション内に設置するような場合には、これらの手段をとる必要があります。  また、管理費等を支払わない区分所有者に対しては、管理組合は、管理費等を請求する訴えを提起することができます。区分所有法は、管理者が規約又は集会の決議によって、管理者が訴訟上の原告・被告となることを認めていおります(区分所有法26条)。この場合の集会決議は、通常の決議(区分所有者及び総専有面積の過半数による決議)で行います。
4 復旧及び建て替え  まず、復旧については、区分所有者は、専有部分が滅失した場合には、自己の費用負担で専有部分を復旧することができます。共用部分については、滅失部分の価格割合がの2分の1以下の小規模滅失の場合には単独で復旧することができ、復旧費用を他の区分所有者に対し専有面積割合に応じて償還請求することができます。ただし、管理組合が集会決議(通常の決議で足ります)で復旧を決議をした場合には、単独では復旧することができなくなります(区分所有法61条1項、2項、3項)。滅失部分の価格割合が2分の1を超える大規模滅失の場合には、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数決で復旧の決議をすることができ、この場合、決議に賛成しなかった区分所有者は、決議に賛成した区分所有者に対して、区分所有権(敷地利用権を含みます)を時価で買取るべきことを請求することができます(区分所有法61条5項、7項)。そして、建物が滅失した日から6ヶ月以内にこの決議ができない場合には、復旧を望まない区分所有者は、復旧を望む他の区分所有者に対して、区分所有権(敷地利用権を含みます)を時価で買取るべきことを請求することができるます(区分所有法61条8項)。  次に、建替えについては、老朽、損傷、一部滅失などによって、建物の価値等に照らして、建物の維持、回復に過分の費用を要するに至った場合には、管理組合は、区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数決で、建物を取り壊して新たに同一敷地上に主たる使用目的が同一である建物を建築する旨の決議をすることができます(区分所有法62条)。  建替えの決議がなされた場合には、集会を招集した者は、建替え決議に賛成しなかった区分所有者に対して、遅滞なく建替え決議の内容で建替えに参加するか否かの回答を書面で求める必要があります(区分所有法63条1項、2項)。この回答を求められた区分所有者は、回答の催促を受けたときから2ヶ月以内に回答することを要し、回答しない場合には不参加の回答をしたとみなされます(区分所有法63条3項)。そして、建替え決議に賛成した区分所有者及び建替えに参加する回答をした区分所有者は、建替えに不参加の回答をした区分所有者に対して、区分所有権及び敷地利用権を時価で売渡すべきことを請求することができます(区分所有法62条)。

 

 

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