1.金融商品取引をめぐる事件

1.有価証券市場における公正確保と不公正な取引を排除して投資者保護を図るために証券取引法が規定されました。また、その他同法の委任を受けた省令や政令も多くあります。証券取引法における公正確保と不公正な取引を排除する規定は以下のとおりです。

2.
株式会社のうちでも特に上場会社または店頭登録会社は、株式や社債を発行して不特定多数の投資者から直接資金を集めることができます。この場合、多数の一般投資者が適切な投資判断をなし得るよう、証券の発行者である企業に対して、当該企業や証券の内容に関する充分な情報開示を行わせる必要があります。そのため、企業ができるだけ正確に企業情報を開示するように、開示制度(ディスクロージャー)が設けられております。

3.
証券の発行段階における開示制度として、有価証券及びその発行者である企業内容を開示する有価証券届出制度があります。発行価額または売出価額の総額が5億円以上である有価証券の募集または売出をするにあたっては、適用除外証券でない限り、原則として発行者は、当該募集または売出に関し、有価証券届出書及びその添付書類を大蔵大臣に提出してその届出をしなければなりません(証取法4条1項、5条1項、4項)。また、募集または売出につき第4条1項本文または2項本文の規定の適用を受ける有価証券の発行者は、当該募集や売出に際し、目論見書を作成し(証取法13条)、これを投資者に交付しなければなりません(証取法15条2項)。これらの有価証券届出書や目論見書には、募集・売出要領、会社の目的、商号及び資本または出資に関する事項、会社の営業設備及び経理の状況、企業集団等の状況、株式事務の概要等が記載されています(開示省令8条、12条)。

4.
また、証券の流通段階における開示制度として、有価証券報告書、半期報告書、臨時報告書があります。有価証券報告書には、会社の商号、会社の属する企業集団及び会社の経理状況その他事業の内容に関する重要な事項、公益または投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定められる事項を記載するものとされ、内閣総理大臣宛提出されます(証取法24条1項)。半期報告書は、有価証券報告書提出会社のうち1年決算の会社が毎事業年度の開始後6ヶ月経過後3ヶ月以内に、内閣総理大臣に提出することが義務づけられている文書です(証取法24条の5、1項)。臨時報告書は、右会社の企業内容に関して投資判断に影響を与える一定の事実が発生した場合に、遅滞なく内閣総理大臣に提出することを義務づけられています(証取法24条の5、4項)。

5.
証券取引法では、有価証券市場が自由かつ公正に行われるべきことを担保するため、相場の操縦や内部者取引による人為的な相場が作られないような規制も行っています。そのため、不正取引行為の禁止(証取法第157条)、風説の流布、偽計利用等の禁止(証取法第158条)、相場操縦行為の禁止(証取法第159条)等が規定されています。このうち、最近話題に上ることが多いのがインサイダー取引(会社関係者による内部者取引)の禁止証取法166条)です。これは、右条文に掲げられた会社関係者であって、上場会社等に係る業務等に関する重要事実を当該各号に定めるところにより知った者は、当該業務等に関する重要事実の公表がされた後でなければ、当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買その他の有償の譲渡等をしてはならないものとするものです。そのため、上場会社等の役員や使用人その他の従業員らが、新株発行や合併、会社分割、営業譲渡、新製品または新技術の企業化、業務上の提携等の重要事実をその職務において知った場合には、右重要事実の公表前に有価証券等の取引をすれば、インサイダー取引にあたり、刑事罰として3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処せられます(証取法198条18号)。なお、証取法166条では、当該上場会社等の子会社にかかる会社関係者について、当該子会社の業務等に関する重要事実で166条2項の5号から8号までに規定するものにも規制を及ぼしています。

6.
証券取引法ではさらに、公正な取引がなされ顧客に対して不当な損害を与えないような規制もしています。具体的には、断定的判断の提供による勧誘の禁止(証取法第50条1項@A)、損失保証、損失補填の禁止(証取法第50条の3、1項)、その他証券会社の健全性の準則等に関する省令で禁止されている虚偽の表示等の禁止、特別の利益提供の禁止、作為的相場形成の禁止、地位利用等による売買の禁止等(証券健全性省令2)などがあります。

7.
証券取引をめぐる紛争にはさまざまなものがありますが、よく見られるのは契約成立の有無取引一任勘定の有効性の問題です。証券取引の場合、基本契約を締結して口座を開設した後は、投資者が電話で売買指示をすることが多いことや、決済が売買成立後でよいことから、当該取引によって損害を被った投資者が後に売買の有効性を争うことがあり得ます。証券会社では各取引が成立する都度、取引経過を予め登録してある投資者の住所宛に送付することとなっておりますので、投資者としては適宜、当該売買を確認できるため右のような紛争が生じる可能性は少ないと言えます。しかし、投資者が借名口座等を利用して取引を行っている場合や証券会社から送付される取引報告書を全然見なかったような場合には、万一、証券会社の社員が投資者に無断で売買を行ったとき、投資者から当該注文がなかったことを立証することは困難となります。そのような場合には、他の間接事実から、当該売買契約の無効を主張することとなります。また、取引一任勘定とは、顧客の取引ごとの同意を得ないで、証券会社もしくはその役員、使用人が、売買の別、銘柄、数または価格の1つでも定めて顧客の計算で取引を行うことであって、顧客に損害を与える危険性が大きいことから、原則として禁止されています(証取法42条)。

 

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