3.訪問販売、マルチ、割賦販売、薬事法などの事件

 物品の販売については、店頭での現金取引以外に、今日、クレジットカードなどを利用した割賦販売などの方法や、訪問販売、通信販売、連鎖販売など、様々な形態が取られてきております。
 たとえば、健康食品がブームとなり、その販売方法についても、現在、割賦販売や、通信販売、訪問販売、連鎖販売(いわゆるマルチ商法)等様々な形態が取られているのが現状です。
 販売形態に着目すれば、これらの販売方法は、それぞれ法的な規制が異なっています。割賦販売、ローン提携販売などについては割賦販売法による規制が、訪問販売や、通信販売、マルチ商法については特定商取引法による規制がなされております。
 これらの販売形態に共通するのは、商品の販売価格、代金の支払方法、権利の移転時期、契約解除に関する事項について、書面で明らかにしてこれを顧客に交付しなければならないことであります(割賦販売法4条、29条の3、30条の2、特定商取引法4条、18条、37条)。また、通信販売以外については、いずれもいわゆるクーリングオフが規定されており、上記書面を受け取った日から8日以内に契約申込の無償撤回(連鎖販売取引および業務提供誘引販売取引の場合には、書面を受け取った日から20日以内の契約解除)が可能とされ、購入者の保護が図られています(割賦販売法4条の4、29条の4、30条の6、特定商取引法9条、24条、40条、48条、58条)。なお、通信販売については、クーリングオフが法定されていませんが、商品の引き取りまたは返還についてクーリングオフと同様の特約がある場合も多く、特定商取引法は、業者に対し、通信販売の広告にその特約の内容を表示することを義務付け、その特約がないときはその旨を広告に表示することを義務付けております(特定商取引法11条4号)。
 訪問販売や電話勧誘販売の場合、販売業者は、契約勧誘に際し、又申込の撤回、解除を妨げるために、当該訪問販売に係る売買等の契約に関して、顧客に対し、商品購入の判断に影響を及ぼすことになる重要な事柄について、虚偽を告げてはならないとされ(特定商取引法6条、21条)、違反者には、2年以下の懲役、300万円以下の罰金が科せられます(特定商取引法70条)。
 また、連鎖販売取引の場合、連鎖販売取引の勧誘に際し、又契約解除を妨げるため、


@商品の種類、性能、品質、役務の種類・内容
A連鎖販売取引の条件となる特定負担(商品購入代金、役務の対価の支払、取引料など)に関する事項
B契約解除に関する事項
C連鎖販売業に係る特定利益(例えば、勧誘して組織に加入させた人が提供する商品購入代金、役務の対価の支払、取引料の一定割合の報酬を受け取る場合や、勧誘して組織に加入させた者があるときは統括者から一定の金銭を受領する場合など)に関する事項
Dその他連鎖販売業に関して連鎖販売取引の相手方の判断に影響を及ぼす重要事項

の、5つの事項については、故意に事実を告げず、又は虚偽事実を告げてはならないとされ(特定商取引法34条)、違反者に、上記と同様の刑罰が科せられます(特定商取引法70条
したがって、連鎖販売取引の場合、たとえば確実に収入が得られる保証がないのに、このビジネスに参加すれば誰でも確実に何百万円の月収が得られる、などといって取引を勧誘した場合には、特定商取引法34条1項4号違反の罪によって処罰されることになります。
 このほか、健康食品の販売の態様に関する規制で、特に注意しなければならないのが、薬事法の規制であります。薬事法は、医薬品の販売を薬局開設者又は医薬品販売業の許可を受けた者以外の者による医薬品の販売、授与等(販売授与を目的とした貯蔵、陳列を含みます。)を禁止し、違反者に刑罰(3年以下の懲役ならびに300万円以下の罰金)を科しています(薬事法24条、84条)。薬事法上の「医薬品」には、厚生大臣が定めた日本薬局方に収められた物(アスピリンなど)以外に、「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であって器具器械でないもの」、「人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって器具器械でないもの」を「医薬品」と規定しています。この「目的とされている物」が要件とされているため、健康食品として販売されるものは、例えば乳酸菌飲料など、それ自体は特に日本薬局方に収められておらず、又製造段階では医薬品的な効能自体を目的としていないものが数多く流通していますが、これらについては、食品として、薬事法上の販売許可を取らずに販売することも可能である一方で、医薬品的な効能(病気の治療に効果があることなど)を表示して販売すれば、薬事法上、規制の対象とされることがあるのです。それゆえ、乳酸菌などの健康食品を使用したものでも「癌に効く」「成人病に効く」などといって販売すれば、医薬品の販売とみなされますので、無許可で販売した場合には薬事法違反で処罰されかねませんので、この点特に注意が必要なのであります。
 厚生省の薬務局長通知である「無承認無許可薬品の指導取締りについて」では、その物の成分本質、形状(剤型、容器、包装、意匠等)、表示された使用目的・効能効果・用法用量、販売方法、販売の際の演述等を総合的に判断して、通常人が医薬品的な効能を目的とした物であるという認識を得るかどうかを基準に、「医薬品」に該当するか否かを判断するものとし、当該商品の成分本質に対応して、直ちに医薬品と判断するか、医薬品的な効能効果の標榜の有無、形状、用法用量等を基準として医薬品と判断するかの具体的判定基準を定めています。
 この基準によると、医薬品的な効能効果を標榜するものは、原則としてすべて医薬品であると判断され、但し、当該成分が薬利作用の期待できない程度の量で着色、着香等の目的のために使用されているものと認められ、かつ、当該成分を含有する旨標榜するが、その使用目的を併記する場合等総合的に判断して医薬品と認識されるおそれのないことが明らかな場合を例外としています。
 これによると、例えば、乳酸菌の事例では、医薬品的な効能効果の標榜がある場合、又は、形状及び用法用量が医薬品的であるものについては、医薬品と判定されることになります(局長通知判定表1(c))が、通常人が食品であると判断するような量、形状、注意書の存在等によっては、医薬品ではないと判断されることになります。

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