1.会社経営権、株主権についての事件

1.株主権の意義
 株主権とは、株主が株式会社の構成員としてもつ権利義務の総称をいい、団体から利益配当や清算時の残余財産分配請求権などの経済的利益を受ける権利(自益権)と、議決権など団体の経営に参与する権利や、少数株主権などの会社運営を監督是正する権利(共益権)とに分類されます。
 株式会社の構成員の地位は、株式という均一に細分化された割合的単位であらわされるため、株主の権利は、原則として、所有株式数に応じた権利となりますが、例えば、利益配当などを他の株主に優先して受けとることのできる「優先株」や、議決権行使が制限された「議決権なき株式」などの発行も認められています(商法222条)。
 また、株主が、株主権を行使するためには、会社から株主であることが認められる必要があり、株主名簿に記載されていない株主は、会社に株主であることを対抗することができません(商法206条)。


2.
会社経営権について
 株式会社の経営は、株主総会で選任される3人以上の取締役で構成される取締役会および代表取締役をはじめとする業務執行取締役によって行われますので(商法254条、255条、260条)、株主は、株主総会における取締役の選任、解任(商法257条)や、株主提案権(商法232条の2)などの少数株主権を通じて、会社経営をコントロールすることになります。
 株主は、株主総会で議決権行使し、株式会社の基本事項の決定や取締役の選任・解任を行いますが、議決権は原則として1株につき1つでありますので(一株一議決権の原則商法241条)、会社経営の実権を左右するのは、所有株式数ということになります。そして、株主の権利行使には、株券の所持、株主名簿への登載が必要とされますので(商法205条、206条)、たとえば株式の譲渡担保によって金銭を借入れ、株券の占有を失って、株主名簿上の名義も書換えられてしまったような場合で、借入金返済後も株券の返還を受けられないような場合には、債権者に対し株券引渡請求を行使し、株券を取り戻したうえで、株主名簿上の名義を書換えて、株主権を行使する必要があります。
 株主総会決議の要件については、問題となる局面で異なる定めが商法に規定されており、したがって、会社経営支配においては、この決議要件を満たすことが必要です。
@ 通常決議事項
 通常決議(普通決議)とは、発行済株式総数(議決権なき株式は算入しません)の過半数に当たる株式を有する株主が出席し(定足数)、その議決権の過半数をもってする決議を言いますが、商法又は定款に別段の定めがない限り、原則として株主総会決議はこの方法によります(商法239条)。
 取締役、監査役の選任決議は、通常決議で行います。
 定款をもって、決議要件を加重し又は軽減することも可能で、定足数を排除することもできますが、取締役、監査役の選任については、特に重要であることから、定款の規定によっても、法定の定足数を発行済株式総数の3分の1未満に引き下げることは許されません(商法256条の2、280条)。
A 特別決議事項
 商法上の特別決議とは、発行済株式総数の過半数に当たる株式を有する株主が出席して(定足数)、その議決権の3分の2以上にあたる多数をもってする決議をいいます(商法343条)。
 定款の変更(商法342条、343条)、営業の全部又は重要な一部の譲渡(商法245条1項)、営業全部の賃貸その経営の委任、他人と営業上の損益全部を共通にする契約その他これに準ずる契約の締結・変更又は解約、他の会社の営業全部の譲受(商法245条2項、3項)、会社が設立後2年以内に、その成立前から存在する財産にして営業のため継続して使用すべきものを、資本の20分の1以上にあたる対価をもって取得する契約(事後設立、商法246条)、取締役・監査役の解任(商法257条、280条)、第三者に対する新株、転換社債、新株引受権付社債の有利発行(商法280条の2、341条の2、341条の8)、分離型新株引受権付社債の発行(商法341条の8)、資本の減少(商法375条)、会社の解散(商法405条)、会社の継続(商法406条)、会社の合併(商法408条、有限会社法60条)、株式の併合(商法214条)、株式交換(商法353条)、株式移転(商法365条)、会社分割(商法374条、374条の17)が、特別決議事項となります。但し、株式総数の20分の1を超えない簡易合併、簡易交換の場合、ならびに、資産の20分の1を超えない簡易分割の場合は、株主総会の特別決議を要せず、取締役会の決定でできます(商法358条、374条の23、413条の3)。

B 特殊決議事項
 商法上、特別決議よりも更に厳格な決議要件を必要とする特殊決議事項があります。
 自己取引(商法265条)に関する、取締役の責任免除の決議については、発行済株式総数の3分の2以上の多数による決議を必要とします(商法266条6項)。また、株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めをする定款変更の決議、ならびに、株式会社の有限会社への組織変更決議については、総株主(議決権なき株式の株主を含みます)の過半数かつ発行済株式総数の3分の2以上にあたる多数による決議を必要とします(商法348条、有限会社64条3項)。なお、取締役、監査役、発起人、清算人の責任の免除(商法266条5項、280条、196条、430条)については、総株主(議決権なき株式の株主を含みます)の同意が必要でありますが、株主総会を開催する必要はありません。


小規模閉鎖会社の場合
 社会に散在する大衆資本を結集し、大規模企業の経営を可能ならしめることが、株式会社の本来の目的であります。そのため、株主が、会社の業績に対する判断にしたがって、随時自由に株式を譲渡して投下資本を回収することができるようになっていることが、法律の原則であります(株式譲渡自由の原則商法204条1項本文)。しかし、我が国の現状では、同族的な中小規模の会社が株式会社の大多数を占めており、このような会社では、好ましくない第三者が株主となり、会社運営を阻害することを防止する必要もあります。そこで、法は、株式譲渡自由の原則に例外を認め、株式譲渡に取締役会の承認を要する旨定款に規定することが認められています(商法204条1項但書)。
 定款の規定により株式の譲渡につき取締役会の承認を要する場合においては、株式を譲渡しようとする株主は会社に対し、譲渡の相手方、譲渡しようとする株式の種類及び数を記載した書面をもって、譲渡を承認すべきこと、またはこれを承認しないときは他に譲渡の相手方を指定すべきことを請求することができるほか(商法204条の2)、株式の譲受人や、競売、公売により株式を取得した者から、株式取得の承認および承認しない場合における買受け人の指定を請求することもできます(商法204条の5)。また、株式譲渡の相手方指定の請求があったとき、取締役会は、会社自身を買受け人に指定することができますが、これにより会社が株式の売渡請求をするためには、株主総会の特別決議を経なければならないものとされております(商法204条の3の2)。同様に、会社は、株主の相続人から相続によって取得した株式を相続の開始後1年内に買い受けることができますが、この買受けを為すにも株主総会の特別決議を必要とします(商法210条の3)。そしてこれらの場合、会社が買い受けることのできる株式の数は、両者併せて発行済株式総数の5分の1を超えることができないとされております(商法204条の3の2、210条の3)。

 

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