2.取締役の会社に対する責任・監査役等

1.取締役の会社に対する責任は、商法266条に規定されています。同法によれば、違法配当を行った場合(1項1号)、株主の権利行使に関する利益供与の禁止に反して財産上の利益を供与した場合(1項2号)、他の取締役に対して金銭の貸付を行った場合(1項3号)、取締役と会社間の利益相反取引を行った場合(1項4号)のほか、取締役が法令または定款に違反する行為を行った場合(1項5号)で、これらの行為によって会社に損害が生じた場合には、右行為をなした取締役らは連帯して会社に対する損害賠償責任を負うものとされています。このうち、法令違反の中には、取締役の善管注意義務(商254条3項)や忠実義務(商254条の3)、取締役の競業避止義務(商264条)も含まれていると解されていますから、結局、取締役が任務違反行為を行った場合には、商法第266条によって会社に対する損害賠償責任を負うこととなります。

2.
右責任を負うべき取締役は、原則として当該任務違反行為をした取締役自身です。しかし、その行為が取締役会の決議に基づき行われた場合には、その決議に参加した取締役もまた同一の責任を課せられます(商266条2項)。そして、決議に参加した取締役のうち議事録に異議をとどめなかったものは、この決議に賛成したものと推定され(商266条3項)、立証が容易となっています。右損害賠償請求の時効消滅期間は、一般の債権同様に10年です。

3.
取締役の責任において特に問題となるのは、善管注意義務違反と経営判断の問題です。すなわち、社会が複雑化し取引形態も多様化している現代社会においては、取締役が専門的知識や義務を尽して会社のために行った行為であっても、結果として裏目に出て会社に対して損害を加える場合も大いにあり得ます。そしてその場合でも、取締役らに対して会社経営を委ねた株主が取締役に対して損害賠償責任を追及できるとすることは、取締役に対して酷に過ぎ、ひいては会社の積極的・機動的な経営が不可能ともなりかねません。そのため、アメリカにおいては、経営判断の法則と呼ばれる概念が発達しました。この法則は、「取締役が会社及び彼自身の権限内において、ある決定を下した場合に、その決定に合理的な根拠があり、かつ彼が会社の最良の利益であると誠実に信じた事柄以外には影響は受けずに、彼独自の最良と判断の結果として、当該決定を下したのであるならば、裁判所は、取締役の経営事項については干渉しないし、裁判官の判断をもって、取締役の判断に代替せしめることはしない」というものです(有斐閣「新版注釈会社法」275頁)。そして、わが国においても、取締役の具体的な任務違反があるかどうか検討するに関して、右指標を用いて取締役の善管注意義務違反を否定した裁判例も少なからず存在します。

 

 

前のページへ戻る



弁護士法人 赤坂法律事務所

〒102-0075
東京都千代田区三番町1番地17
パークサイドアネックス3階A号室

電話:03-3262-3098 FAX:03-3237-7187