4.取締役の会社債権者に対する責任事件

.商法第266条の3では、取締役がその職務を行うについて悪意又は重過失で任務違反行為をなした場合には、取締役が第三者である会社債権者に対しても責任を負うべき旨を規定しています。


2.
本来、取締役と会社債権者との間には何らの契約関係がある訳ではないので、取締役がその任務に違反しても取締役は会社に対して責任(商266条)を負えば足りますが、取締役の任務違反行為で会社が損害を被った場合には、その分会社財産が減少しますので、会社財産に対してのみ請求権を有する会社債権者も結果的に損害を被ることが多いと言えます。そのため、法は、第三者が取締役に対して損害賠償を請求できることを規定しました。


3.
この場合、どのような行為が任務違反にあたるかが問題となりますが、違法行為や定款違反行為に限られず、広く善管注意義務違反商第254条3項、民644条)、忠実義務違反商254条の3)も含まれると解されています。したがって、刑事法令に触れるような行為をした場合はもちろんのこと、民事法令違反の行為や会社の内規等も参考にして総合的に決するべきとされています。代表取締役の任務懈怠行為として判例上挙げれられているのは、支払見込のない手形の発行や商品の購入、詐欺行為、会社財産の保管義務違反、使用人や取締役に対する監督義務違反、取締法規違反、放漫経営等があります。また、業務執行取締役の担当業務の任務懈怠や平取締役の業務執行監視義務違反等もあります。

4.
取締役が責任を負うための主観的要件は、任務懈怠に関する取締役の悪意又は重過失です。悪意とは一般的には、損害の発生について故意(認識)がある場合であり、重過失とは、右損害の発生について容易に認識すべきであるにもかかわらず注意義務に違反して認識しなかった場合を言います。具体的には、「取締役は、財務状況など会社が置かれた状況を知り、業務執行に関して自分のとる態度(作為・不作為)がどういう結果をもたらすかを、把握すべく務める義務を負っている。この義務を放棄して顧みないのは悪意による任務懈怠であり、またそれを著しく怠るのは重過失による任務懈怠である。」(有斐閣「新版注釈会社法(6)」318頁)などと説明されています。

5.
会社の規模が比較的小さく、会社財産があまり存在しないような事案では、債権者としては本件条項により取締役個人の責任追及を行って、債権の回収を図ることが必要となります。

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