8.企業再編(合併会社の分割

「合併」
激変する経済環境に、企業が敏速に対応できるよう、平成9年、11年、12年と企業再編に関する商法会社法の規定が大幅に改正されました。
1.まず、合併とは、複数の会社が合体して1個の会社になることで、新設合併と吸収合併がありますが、合併後の会社は、合併前の会社の権利義務を包括的に承継する点で、営業譲渡と異なります。合併手続は、概略以下の手続で進行します。
@ 合併契約書の作成を当事会社の代表取締役が署名捺印のうえ行います(商法408条
A 関係書類の備置き公示 合併契約書、貸借対照表、損益計算書、合併比率に関する説明書などを、承認総会の2週間前から合併後6ヶ月間本店に備置し、株主と債権者の閲覧に供する(商法408条の2
B 合併契約書承認の株主総会の開催。承認には特別決議を要します
C 反対株主には、会社に対して株式買取請求権が認められています
D 会社は公示または通知による債権者保護の手続をします(商法4 12条
E 消減会社から存続会社への財産の引渡、消減会社の株主へ存続会社の株式が割当てられます
F 合併の登記をします(商法414条
なお、合併には、独占禁止法上の規制があり、合併会社のいずれか一の会社の総資産が一定額を超える場合には、事前に公正取引委員会に届出る必要があります。そして、合併が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合や、合併が不公正な取引方法によるものである場合などは、公正取引委員会は必要な措置を命ずることができます(独禁法15条)。

.合併については、平成9年の商法改正により簡易合併の制度が導入されました。すなわち、合併後存続する会社が合併に際して発行する新株の総数がその会社の発行済株式の総数の20分の1を超えず、合併交付金も存続会社の純資金の50分の1を超えない場合には、合併について株主総会の承認を必要としません(商法413条の3)。つまり取締役会の決定で合併が可能な場合です。

3.
合併をめぐっては、種々の紛争がありますが、合併契約書作成後、株主総会における合併承認前の契約破棄について、債務不履行責任が問えるかという問題があります。特約条項があれば、それによりますが、破棄に至る具体的状況によっては、法的責任(債務不履行や、信義則違反、契約締結上の過失)は発生する場合があります。合併契約書に調印した代表取締役が会社の支配株主であって、株主総会の特別決議を容易に得られるような場合などは、注意を要します。また、詐欺的手法や財務内容に不実な表示があったような場合には責任原因となります。
 つぎに合併は、存続会社の株主が消減会社の株主に割当てられることからして、債務超過会社の合併は認められませんが、このような場合、商権としての暖簾の計上によって債務超過を回避する方法がとられますが、著しく不当な金額の計上の場合には、合併無効の訴の理由になります。
 
「会社の分割」
1.会社の分割は、従来は分割そのものを目的とした法制度がなかったため、現物出資による会社設立、財産引受を伴う会社設立(商法168条)や事後設立(商法246条)といった変則的方法によっていました。現物出資は、会社に金銭以外の財産を出資することであり、財産引受は会社の設立の段階で、発起人が会社の成立を条件として財産を譲受けることを約束することです。また、事後設立は、会社が設立してから2年以内に一定の財産を取得する契約をなすことであります。そして、これらの移転される財産は、分割される会社から営業譲渡によって受皿会社に移転され、現物出資の場合は受皿会社の株式が分割される会社に発行され、財産引受、事後設立の場合は営業譲渡の対価である売買代金が受皿会社から分割される会社に入金されます。

2.
ところが、平成12年の商法改正による会社分割制度によれば、分割される会社もしくはその株主は、分割によって営業を譲受ける新設会社や既存会社から株式の発行を受けます。会社はそれと引きかえに営業を分割、もしくは一括して新設会社もしくは既存会社に承継させて会社の分割ができることとなりました。会社の分割には、新設分割と吸収分割があります。新設分割は分割により設立した会社に、分割する会社の営業の一部もしくは全部を承継させるものであり、吸収分割は既に存在する他の会社に営業を承継させるものです(商法373条、374条の16)。発行される株式を分割をする会社が引き受ける場合を物的分割といい、発行される株式を分割をする会社の株主が引き受けるのを人的分割と言います。したがって、この組合わせで会社の分割は4とおりの方法があることになります。
  いずれにせよ、株式交換や株式移転の制度と同様、出資や売買代金としての金銭は動かず、株式・株券というペーパーの発行により会社  組織の分割・別法人化が行われます。

.割の手続は次のとおりです。
@新設分割の場合には分割計画書を、吸収分割の場合には、分割契約書を作成(商法374条、374条の17
A株主総会の会日の2週間前から分割の日後6ヶ月を経過するまで、本店で分割計画書(分割契約書)、株式割当理由書、賃借対照表、損益計算書などの書類を備置き、株主、会社債権者の閲覧に供する(商法374条の2、374条の18
B株主総会の特別決議による分割計画書(分割契約書)の承認
C反対株主の株式買取請求手続(商法374条の3、374条の31
D債権者保護手続、公告および個別催告により、異議ある債権者には、弁済、担保提供を行う(商法374条の4、374条の20
E営業の引渡と分割の登記(商法374条の8、374条の24

4.
会社分割はいずれの方法による場合でも、法的性格は営業譲渡とは異なり、権利義務の包括的承継でありますので、分割によって営業を承継した会社は分割計画書(分割契約書)の記載に従い、分割をした会社の権利義務を承継しますが、債権者保護手続によって公告および催告を受けなかった債権者に対する関係では、分割会社も分割の日に有していた財産を限度として共同して弁済の責任を負うこととされています(商法374条の10、374条の26)。

5.
会社の分割にも新設分割、吸収分割いずれの場合にも、営業を譲受ける会社が発行する株式を、分割する会社が引受ける場合には、簡易分割の手続があります。すなわち、承継される財産の価額が分割する会社の資産額の20分の1を超えない場合には、株主総会の特別決議を必要としません(商法374条の6、374条の12)。この場合には取締役会の決定で、分割ができます。また、この簡易分割の制度に呼応して、簡易営業譲受けの制度が導入されました。すなわち、会社が他の会社の営業全部を譲受ける場合、その対価が最終の賃借対照表により会社に現存する純資産の20分の1を超えないときは、株主総会の特別決議による承認を要しないことになりました(商法245条の5)。

6.
会社の分割によって、分割された営業部分の労働契約も承継されますが、平成12年の商法の会社の分割制度の改正附則第5条は、分割に伴う労働契約の承継に関する会社の労働者との協議義務を明定し、あわせて、「会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」労働承継法)が制定されました。すなわち、分割する会社の分割対象となる営業部門に主として従事していた労働者は、分割後にその労働契約が承継されないときには、一定の期間内に書面により異議を述べることによって、承継させることができ(労継4条)、分割対象となる営業部門に従として従事していた労働者は、分割後にその労働契約が承継される場合には一定の期間内に書面により異議を述べることによって、承継されないことになる(労継5条)とする制度で、労働者の地位の保護がはかられています。

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