9.親子会社、持株会社

1. 2000年3月期から、証券取引法上、上場企業等の有価証券報告書をはじめとするディスクロージャーに連結決算が開始し、親子会社、関連会社を含めた企業グループにおける企業実態が開示されることとなり、粉飾決算に厳しいチェックが入ることとなりました。このため、企業法務においては、子会社、関連会社の支配、管理と関連して親子会社の法律問題が特に注目されるようになりました。

2
. 商法上、親子会社とは、一方の会社が他方の会社の株式の過半数を有する場合で、一方の会社を親会社、他方の会社を子会社と言います。連結決算制度の対象は、さらに、株式の20%以上50%以下を保有されている会社や役員派遣、取引契約などにより支配され、従属している会社も関連会社として連結決算の対象になっています。

3
. まず、親子会社についての商法上の規制として、商法211条は、子会社は
@株式交換、株式移転、会社の分割、合併または他の会社の営業全部の譲受によるとき
A会社の権利の実行(担保権の実行など)にあたりその目的を達するため必要なとき
以外は、親会社の株式を取得することを禁止しています。これは、親会社と子会社が支配従属の関係にあり、財産的に一体と見られるので、自己株式取得の規制の潜脱行為となること、相場操縦や経営陣の地位保全のために悪用されることなどの理由から禁止されています。そして、親子会社の関係まではならなくても、発行済株式の4分の1を超えて株式を保有されている会社は、株式を保有されている会社の株式を持っていても、その議決権を行使できません(商法241条)。これも、親会社の経営の健全性を保つための規制です。

4
. つぎに、子会社の情報開示のため、親会社の株主および会社債権者は、子会社の定款、株主名簿、株主総会議事録の閲覧謄写ができ、また、親会社の株主は、裁判所の許可を受けて子会社の計算書類等を閲覧謄写できます(商法282条)。そして、親会社の少数株主の子会社の会計帳簿閲覧謄写権も裁判所の許可を条件に認められています(商法293条の3)。

5
. また、親会社の監査役の子会社調査権が認められ(商法274条の3)、親会社の監査役は子会社の取締役、支配人その他の使用人を兼ねることはできないとされています(商法276条)。

6
. 平成11年の証券取引法の改正により、インサイダー取引の規制対象者に上場会社の親会社、子会社の各役職員、各契約者、小数株主が加えられ、重要事実に上場会社の子会社の重要事実等が加えられ、企業グループ全体にインサイダー規制がかぶせられました(証券取引法166条)。

7
. ところで、親子会社の極端な例は、子会社の株式の100パーセントを保有している持株会社(完全親会社)と子会社(完全子会社)の関係です。独占禁止法9条は、事業集中力が過度に集中しない限り、持株会社を認めました。持株会社とは、もっぱら子会社を支配、管理することを事業目的とする会社のことです。持株会社は、子会社の株式利益配当と子会社の管理料、ロイヤリティー使用料などから収益をあげて、株主に利益配当をします。従来の事業会社の子会社管理は、親会社の関連事業部などで、子会社のかなりの自主性を重んじて行われてきましたが、持株会社の場合は、コーポレートガバナンスの点から、株主の監視は持株会社の取締役の背後から子会社の取締役の業務執行にそそがれてきます。企業は、現在、意思決定の迅速さから、取締役の人数を減らしていますが、持株会社の少人数の取締役の善管注意義務は、子会社の取締役の業務執行の中味にまでそそがなければならず、単なる株主総会の決議事項に限定されるものではなくなってくると思われます。同時に、子会社の取締役は、広範囲の経営における採量権がせばめられ、むしろ責任は取締役として一人株主たる持株会社に負うけれど、実体は、執行役員のような業務執行者となるように思われます。平成11年の商法改正により、株式移転により完全親会社を、株式交換により完全子会社をつくることができるようになりましたが、持株会社による企業グループの経営は、今後多くの試行錯誤を経て定着していくものと思われます。

 

前のページへ戻る



弁護士法人 赤坂法律事務所

〒102-0075
東京都千代田区三番町1番地17
パークサイドアネックス3階A号室

電話:03-3262-3098 FAX:03-3237-7187