3.独占禁止法違反事件

1.平成12年5月、独占禁止法は画期的な改正がなされました。すなわち、不公正な取引行為に対して、私人間の民事的な差止請求権が制定されたのです。従来、独占禁止法は、取締法規であって、違反行為は公正取引委員会の排除措置によって差止められるので、被害者は公正取引委員会の職権発動を促すための要請しかできませんでしたが、今回、不公正取引について、被害者が直接、裁判所にその差止めを訴える権利が認められるようになったのです。

2.
独占禁止法違反行為は、大きく区分して、
@私的独占(特定の事業者の市場シェアの圧倒的な支配などにより自由競争のなくなるおそれのある状態など)
A不当な取引制限(カルテル、談合など)
B不公正な取引方法(不当廉売、抱き合わせ販売、再販売価格の拘束など)
があり、従来は、@、A、Bの違反行為があって公正取引委員会の審決が確定した後には、被害者は無過失責任による損害賠償請求を加害者側にすることができました(審決が確定しない場合には、民法709条による一般の不法行為責任が問える)。今回の改正は、Bの違反行為については、公正取引委員会の審決や排除措置を待つことなく、被害者から加害者側に対して、差止請求権を認め、より強い民事上の救済制度を定めたものです(独禁法24条平成13年4月1日から施行)。すなわち、被害者が加害者側に、裁判所で訴えや仮処分で差止を請求することができるのです。


3.
ところで、平成17年4月に厳罰化の改正がなされた独占禁止法違反に対するペナルティはどうかと言いますと、まず、行政罰としての課徴金があります。これは、前述Aの不当な取引制限(カルテル、談合など)の違反行為に対するもので、違反行為がなされた期間を最大3年さかのぼって、売上高に対し、一定の業種、事業規模に応じて、100分の10から100分の1の割合の金額が課せられます。さらに調査開始日から遡って10年以内に課徴金納付命令を受けた事業者は最大100分の15の割合の金額が適用されることとなりました。その一方で、法定要件(違反事業者が自ら違反事実を申告等)に該当すれば,課徴金の全額ないし3割を減免する制度も設けられました。売上高によっては、企業経営にも影響を及ぼす巨額な金額となります。なお,平成17年改正では,さらに,課徴金減免制度が導入されました。これは,企業のカルテル離脱を促し,且つ,捜査に協力させることが目的です。
 公正取引委員会の立入前の1番目の申請者(カルテルを自己申告した者)には課徴金を免除し,2番目の申請者は課徴金を50%減額,3番目の申請者は30%減額,立入検査後の申請者にも,1番目から3名までなら,やはり,30%減額する制度です。
 つぎに、刑事罰については、前述@の私的独占、A不当な取引制限の違反行為に対して、違反行為をした者に対しては、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金が科せられ、企業には、5億円以下の罰金が同時に科せられます。
 さらには、@、A、Bの違反行為に審決が確定した場合には、無過失の損害賠償請求(第一審の裁判管轄は東京高等裁判所)、審決がない場合には民法709条の一般の不法行為による損害賠償請求(第一審の裁判管轄は各地方裁判所)が、被害者側からなされることがあります。談合事件で、談合取引の相手方が地方自治体の場合など、自治体側が、損害賠償の請求をしない場合で、住民が住民訴訟を提起しているケースもありましたが、地方自治法の改正により、現在では、住民の代位訴訟はなくなり、住民監査請求により、地方自治法の長に違法行為の相手方に訴提起をするよう求めることができるようになりました(地方自治法242条、242条の2)。
 従来、独占禁止法違反事件の損害賠償請求訴訟では、損害額の認定に困難なものがありました。しかし、平成10年から施行された新民事訴訟法248条は「損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる」と規定し、損害認定に裁判所の大幅な裁量権を認めたことには注意を要します。


4.
ところで、独占禁止法違反事件で企業が受けた課徴金や罰金、損害賠償金などのペナルティについては、株主代表訴訟が提起され、役員の責任が問われるケースが出て来ました。企業は社内に独占禁止法遵守委員会を設置するなどして、日常的に社員教育の徹底をはかり、違反行為の未然の防止に努めるべきです。
 当事務所では、これらに対応した企業向けの独占禁止法勉強会や
講演を行っております。

 

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